「旦那様、そろそろお時間かと」
「おお、もうそれほどの時間が経過しておったか」
お爺さん司祭様が怖いお顔でみんなにお水を綺麗にする魔道具の事は黙ってるんだよって言ってたらさ、ローランドさんが急にこんな事を言い出したんだよね。
それを聞いたロルフさんはローランドさんが何を言ってるのか解ってるみたいで、もうそんな時間なのって頷いたんだ。
でもね、二人だけで解ってても僕には何の事か全然解んないでしょ?
だから聞いてみる事にしたんだ。
「ロルフさん。お時間って何? なんかあるの?」
「うむ。ローランドはな、そろそろ君の居住権申請が通った頃だと言っておるのじゃよ」
そう言えば僕たちがこのお家に来る前に、冒険者ギルドの人が役所ってところにロルフさんのサインが入った羊皮紙を持って行ったっけ。
そっか、ローランドさんはその許可が出る時間が解ってるから、ロルフさんのそろそろだよって教えてくれたんだね。
「ギルマスよ。この館を引き渡すのはすぐにでもできると、先ほど言っておったな?」
「はい。ですから、ルディーン君がイーノックカウの居住権取得が認められれば、彼女たちを取得するすべての条件が揃いますわ」
「うむ。ではこの館を見て周るのはこれくらいにして、そろそろ冒険者ギルドへと戻る事にしよう」
お姉さんたちが僕んとこに来るには、僕が居住権ってのをとってお家を買わないとダメだったでしょ?
お家を買うには居住権ってのがいるそうなんだけど、それがもう取れてるんだったらバーリマンさんは今すぐにでも売ってくれるって言ってるんだよね。
だから冒険者ギルドに帰って、今度はお姉さんたちの手続きをするんだってさ。
「皆様、お帰りなさい。ちょうど今、呼びに行かせようと思っていたところなんですよ」
僕たちが冒険者ギルドに帰ると、ルルモアさんが出迎えてくれたんだ。
「ルディーン君の居住権取得の許可が出たのじゃな?」
「はい。先ほど役所に使いに出したものが帰って来まして、無事役所側の手続きが終了したとの事です」
さっきローランドさんが言ってた通り、役所ってところの手続きは終わってたみたい。
だからね、後は僕のギルドカードにその事を書き込めばいいだけなんだってさ。
「と言う訳だから、ルディーン君。君のギルドカードを少し預からせてもらってもいいかしら?」
「うん、いいよ!」
僕が冒険者ギルドのギルドカードを渡すと、ルルモアさんはそれを持ってカウンターの奥に行っちゃったんだ。
それを見てたバーリマンさんが僕に教えてくれたんだけど、どのギルドにもギルドカードの内容を書き換える魔道具が置いてあるんだって。
でね、カードを作る時やランクを上げる時はカウンターのとこにある魔道具でもいいそうなんだけど、居住権や特別な許可証を取ったりした時はそう言うのを書き込む専用の魔道具を使わなきゃダメらしいんだ。
でもね、そんなのをみんなが見えるとこに置いといたら、悪もんが来て盗ってっちゃうかもしれないでしょ?
だからそんな事が無い言うにって、その魔道具は大事なものをしまっとくお部屋に置いてあるんだってさ。
「錬金術ギルドにもあるの?」
「ええ、あるわよ。ただ、街の外から来た人が多く所属する冒険者ギルドと違って、うちのギルドはこの街に住んでいる人ばかりだから、私がギルドマスターになってから一度も使った事は無いけどね」
錬金術師ってなるのは大変だけど、一度なっちゃったらそれだけで結構お金が稼げるそうなんだ。
だから別の街へ移動するなんて危ない事はしないで、普通は生まれた町でずっと暮らすんだって。
「そりゃあ帝都の錬金術ギルドなら居住権の登録や帝城に出入りするための許可を書き込むなんて事もあるだろうけど、イーノックカウは帝国の端にあるでしょ? だからこんな街にわざわざ移り住むような錬金術師はいないのよ」
「他んとこに行かなくってもいいんだったら、別に今住んでるとこでいいもんね」
僕だってお父さんやお母さんが射るグランリルの村から、どっか別のとこに行こうなんて思わないもん。
それにね、前の僕たちだってこのイーノックカウに来る途中で悪もんにあったでしょ?
こんな近いとこでも悪もんがいるくらいなんだから、おっきな街とおっきな街の間はすっごく遠いから、悪もんもいっぱいいるんじゃないかな? って僕、思うんだ。
だったら危ない目に合わないようにって、住んでる街から出ない錬金術師さんの気持ちも解るんだよね。、
「お待たせしました。はい、ルディーン君。ちゃんと居住権取得済みとギルドカードに記載しておいたわよ」
バーリマンさんとそんなお話をしてるとね、ルルモアさんが冒険者ギルドの奥から出て来て僕にギルドカードを渡してくれたんだ。
「わぁ〜い! ありがとう、ルルモアさん」
「これであとは言えさえ購入すれば、キルヴィさんたちの手続きも開始できるわね」
ルルモアさんもね、早くお姉さんたちが借金奴隷にならなくて済むようにしたかったみたい。
だから後はお家を買うだけだねって言ったんだけど、
「おお、その件に関しては先ほどギルマスと話しおうてな」
「はい。ルディーン君の居住権取得が済み次第、権利を移そうと考えていたのですよ」
ロルフさんとバーリマンさんが、さっき見てたお家をもういつでも僕んちにできるんだよって話したもんだから、ルルモアさんはびっくりしちゃったんだ。
お家ってすっごく高いでしょ? だからそのお金を全部いっぺんに払える人なんて、普通はあんまりいないそうなんだよね。
だから買う人と売る人が両方ともいいよって言ったら、お金を払う前でもお家を買った事にできるんだってさ。
「なんと、もうそこまで話が進んでいたのですか?」
「うむ。でじゃ、この場合はギルマスとルディーン君の直接取引と言う形になるから、商業ギルドを通す必要もない。じゃから後は書面に起こしてお互いがサインをし、それをしかるべき団体かある程度の地位がある者、例えば冒険者ギルドかわしじゃな。そのどちらか承認すれば手続きは完了じゃ」
「そうですね。それでは冒険者ギルドが責任をもって書類を作成しますので、少々お待ちください。ギルドマスターにもあらかじめサインをお願いしてきますので」
「おお、頼んだぞ」
ロルフさんがそう言って頷くと、それを見たルルモアさんはね、今度はカウンター奥の階段を上がってったんだ。
さっきギルドマスターのお爺さんのお話をしてたから、きっとそのサインをもらいに行ったんだね。
「さて、これが済んだら、いよいよこの娘らの手続きじゃな」
「ええ、そうですわね」
そんなルルモアさんを見送ると、ロルフさんとバーリマンさんはお姉さんたちの方を見てそう言ったんだ。
でね、そのお姉さんたちはと言うと、まだほんとにこれでよかったのかなぁ? なんて言うんだよ。
「ルディーン君の負担にはならないでしょうか?」
「それに関しては、何の心配もいりませんよ。ギルドの規約でここまでのかかったお金を私たちが出す事はできませんが、これからは違いますもの」
「うむ。ルディーン君の館には、わしの家のものを送り込むことになっておるからのぉ。この子の負担になど、なるはずが無かろう」
ロルフさんはね、僕がグランリルの村んビ帰ってもお姉さんたちのお世話はストールさんやメイドさんたちが全部やるからそんな心配は全然しなくてもいいんだよって、長いお髭をなでながら楽しそうに笑ったんだ。
無事居住権も取得し、館の購入も手続きの段階に入りました。
これでいよいよ次回、お姉さんたちをルディーン君が引き取る事になります。
そしてそれと同時に、やっとお姉さんたちのフルネームと容姿紹介ができるとw
タイミングを逸してしまったため、キルヴィさん以外の二人ってゴブリンに襲われたときにお互いが呼び合っていた名前くらいしか情報が出てないんですよね。
ずっと気になっていただけに、紹介できる日が来てくれて本当によかった。